OPINION9水谷001

<一人当たりGDPを増加させる施策を考える>

 

・経済を活性化するためには労働生産性を向上させることによって、一人当たりGDPを増加させる必要がある。

 

■日本経済停滞が叫ばれて久しい状況にある
わが国GDP(国民総生産)は、米国、中国に次ぐ世界第三位の規模を誇っています。わが国は長らくGDP規模で世界第二位の地位を保ってきましたが、2010年に中国に逆転を許し、その後は経済成長率の違いから経済規模の差は広がるばかりです。中国は2030年代にも米国を凌駕して世界最大の経済大国になるのではといわれています。
但し、中国も2020年代には人口減少社会に突入しますし、米国との貿易摩擦、過大な債務問題、国内経済格差問題等を考えると、現状の経済成長率が続けられるかどうか不透明な面があるのは確かです。とはいえ、日本と中国との経済格差は広がりこそすれ、縮小に向かうというシナリオは立て辛いのが現実的な見方だと思います。

■一人当たりGDPの大きいルクセンブルクとはどういう国なのか
国全体のGDPは、人口×一人当たりGDPで求められます。わが国の場合、人口減少社会に突入し、一人当たりGDPの向上も諸外国に比べて劣後しているという状況にあります。ここでは、一人当たりGDPを増加させることによって経済全体が良くなるという仮説のもと、議論を進めたいと思います(図表参照)。
一人当たりGDPと労働生産性は必ずしも等しい関係にあるわけではありませんが、トレンドは似通っています。大雑把に言えば、一
人当たりGDPは一人当たり所得に近い概念であり、一人当たりGDPの大きな国は、「たくさん稼いで、たくさんお金を使う」という傾向があります。
一人当たりGDPの世界一位は、ルクセンブルクというヨーロッパの小さな国です。過去20年間の公表データをみると、世界一位の常連ともいうべき結果を残しています。この国はどういう国なのでしょうか。ドイツ、フランス、ベルギーに囲まれた小さな内陸国であり、人口は約50万人しかおりません。かつてのルクセンブルクは貧しい農業国にすぎませんでした。第二次世界大戦後に、グッドイヤー、デュポン、モンサントなどの国際的大企業を誘致することに成功しました。その後、1960年代からは鉄鋼業が国内経済を牽引することになります。
現在は、ユーロ圏におけるプライベートバンキング(富裕層を対象に総合的資産管理・運用を行うサービス)の中心地となっています。金融関連業には、国内労働人口の20%近くが就業しているといわれており、このことが低失業率と高報酬を実現しているといえそうです。最近では、通信業と観光業にも力を入れており、あくなき経済成長を追及しています。
筆者はルクセンブルクを訪問したことはありませんが、一人当たりGDPの大きなスウェーデンを訪問したことがあります。スウェーデンは、カジュアル衣料のH&M、自動車のボルボ、通信機器のエリクソンなど多くのグローバル企業を輩出してきました。かつてスウェーデンの首都ストックホルムを訪問した時、空港と市内を結ぶ「アーランダエクスプレス」が最高速度時速200キロで疾走したことに驚愕を覚えました。そして、物価は高いけれど食事が美味く、街並みが綺麗だったことが印象的でした。

■何故、日本の労働生産性は低いのか
さて、何故、日本の労働生産性は低いのか考えたいと思います。実は、OECDの公表データによると、日本の労働生産性は1970年以降50年近く、OECD加盟国のなかで20位前後の低位に甘んじてきました。上位の条件は前述のルクセンブルクであり、2015年からはアイルランドがトップとなっています。アイルランドは、低法人税導入によって多国籍企業誘致に成功したことが高い経済成長率に繋がったといわれています。
日本の労働生産性の低さについては、諸説ありますが、高品質追及に伴うコスト高、過剰サービス、低賃金の常態化、といった要因が考えられると思います。昨今話題となった事例としては、宅配業者による配達問題があります。即日配達や無料での再配達対応という非効率性こそが低労働生産性を招いているのではないでしょうか。サービス業における過剰な価格競争、無償サービスへの対応が生産性向上の弊害になっているという見方もできます。

■労働生産性を向上させるには、適正な対価を支払う文化を育てること
それでは、日本の労働生産性向上のためには何をしたら良いのでしょうか。日本では、サービスはタダという文化があります。サービスに適正な対価を払わないことこそが低労働生産性から脱しきれない元凶ではないでしょうか。そして、ものの値段を上げる努力をすることも大切です。日本全体として、ものの品質と価格が歪んでいる印象があります。なんでこんな高品質な商品が100均で売られているんだ、といった事例は枚挙にいとまがありません。
正当な対価を求めることによって、賃金が上昇し、労働生産性が向上することになります。その結果として、一人当たりGDPが増加し、経済全体が潤うことになるのです。さまざまな政策を実現できる可能性が高まるという点で、経済成長が何故必要であるのかいうまでもありません。サービスや商品価格を引き上げることこそが労働生産性向上、経済成長に繋がると思います。

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