OPINION9渡邉001

<地方創生におけるファンドビジネス>

 

・地方創生において、ファンドビジネスはどのように貢献するべきか。リスクマネー供給の現状から問題提起する。」

 

■はじめに
わたしは、2017年末に不動産投資ファンドを退職し、地域のまちづくり活動とファンド資金をマッチングさせることで、永続的な地域活動を実現することを目的に、合同会社アーバンギークスを2018年2月に起業しました。
具体的な地域案件第一号として、同年8月に広島県福山市鞆の浦地域の古民家再生を目的とした「合同会社鞆まちづくり会社」を地域の人達の支援を得て設立し、現在のところ第一号案件の自主開発を実現するべく地元金融機関等と調整しているところです。
・そのような立場から、地方創生(特に地元主体の小規模ビジネス)において、あるべきファンドマネーの貢献について問題提起できればと思い、筆を執った次第です。

 

■地方創生におけるリスクマネーの現状
地方創生という言葉、2014年の第二次安倍内閣発足とともに「地方創生担当大臣」として石破氏が選出されたことから始まったと記憶しています。「構造改革特区」や「国家戦略特区」を始めとする岩盤規制の改革と、初年度補正予算で約2,500億円の大型予算に基づく各種補助制度の拡充が図られるなど、地方創生元年とも呼ばれ数多の補助制度が地域に拡充されていきました。
ファイナンスにおいても、地域経済活性化推進機構(通称:REVIC)が同年4月に本格的な官民ファンドとして「観光活性化マザーファンド」を設立、地域のまちづくり会社に対するリスクマネー供給を開始しました。主な事例として、兵庫県丹波篠山地域で古民家再生に取り組む株式会社NOTEリノベーション&デザインに対して、株式会社但馬銀行とともに投融資を実行、地域の風景資産を構成する古民家の保全再生に対して金融支援をおこなうなど、従来の補助金とは異なった収益型の金融スキームも形作られるようになってきました。
このような動きは民間セクターにも広がりを見せ、同年12月に設立された投資型クラウドファンディングのプラットフォームである株式会社クラウドリアルティは京町家を投資対象としたファンディングを実行、個人投資家から古民家再生の資金調達をサポートすることに成功しました。
地方創生に向けた地元プレイヤーのビジネスづくりと、それを支援する資金調達手段の拡充はこの5年で大きな広がりを見せてきたのです。他方で、資金調達側において幾つか課題点も見えてきました。

■資金供出側の課題点
昨今の古民家人気及び民泊ビジネスの広がりもあり、多くの地域において古民家再生プロジェクトが計画されてきました。もともと地縁のあるプレイヤーが、故郷に対して何らか貢献したい、伝統的な風景資産を保全したいという危機感から発生したものが多いようです。
これまで古民家再生においては、文化庁の重要伝統的建造物群保存地区指定に伴う補助制度や農林水産省の農産漁村振興交付金(いわゆる農泊補助金)による建物改修に対する資金支援などもあり、補助金獲得を前提とした建物再生が中心でした。ところが、前述したREVICと地域金融機関の連携による地域ファンドの設立によって、これら資金調達にファンドスキームを活用したものが登場してきました。古民家を収益性の見込める一棟貸しホテルとして再生、プロジェクトの与信力を担保できる宿泊オペレータをマスターレッシーとしてプロジェクトに参画させることで収益下落リスクを減少させ、ファンド成立を可能としたものです。これにより、京都のような観光地以外の地域においてもオペレータ与信次第では、ファンドスキームを活用した資金調達ができるようになってきたのですが、課題点も見えてきました。
それは、ファンドスキームに対する理解度が地域金融機関によって大きく異なる、という点です。一般的にプロジェクトファイナンスでは、案件の将来キャッシュフローの蓋然性に応じて期待金利が決まります。物件に担保設定はしますが、担保価値の源泉はあくまでキャッシュフロー、つまり不動産の収益性に依存するモデルです。
ところが地域金融機関のなかには、キャッシュフローではなく土地の路線価、あるいは代表者個人の信用保証に基づく与信評価によってローン判断を行ってきたケースも多く存在します。このようなケースでは、将来キャッシュフローの蓋然性を「リスク・リターン」の観点から定量的に評価するスキルがそもそも存在しません。せっかくのファンドスキームが拡充されてきても、そのスキルの濃淡によってスキーム自体が活用されづらい、そういったことがある

ことが実務者の間で問題として提起されてきました。この状況、ファンドスキームが本格化してから5年経過した現在においても、実はあまり解消されていません。他方、一般社団法人全国銀行協会は2013年、経営者保証に関するガイドライン研究会の取りまとめとして、「経営者保証に依存しない融資の一層の促進」を規定し、金融庁においても実態調査を継続的に行う(https://www.fsa.go.jp/policy/hoshou_jirei/index.html

)など、プロジェクト内容に依拠するファイナンスの考え方を広める活動を展開してきているのですが、融資現場においては、まだ発展途上と感じざるを得ないケースが見られます。(詳細事例を記載すると、いろいろと問題がありますので今回は割愛させて下さい。)

■課題解決に向けた提言
地域プロジェクトに対して、プロジェクトの与信力に応じた期待利回りが設定され、トラックレコードに応じた見直しがなされるような弾力的なファイナンススキームが求められています。多くの地域プロジェクトは、規模もそれほど大きくなく(せいぜい数億程度)、完全なノンリコースファナインスを実現するにはサイズ不足であることは否めません。
・他方、国土交通省は2017年に不動産特定共同事業法を改正し、まさに地域プロジェクトに対する資金調達を目的とした「小規模不動産特定共同事業」を創設しました。これにより、資本金1,000万円以上かつ人的構成要件を満たす企業であれば、不動産特定共同事業法に基づく登録によって(一定の制限はありますが)古民家再生に必要な資金を幅広い投資家勧誘によって調達することが可能となりました。
このような制度及びスキームを拡大させるには、これら制度及びファンドスキームを理解し、地域金融機関とハード交渉をしながら事業実現をおこなっていく人材の広がりが必要だと実感します。ファンド経験者や金融機関実務者、不動産プレイヤーなど多様な人材が地域プロジェクトに入り込むことを期待しています。

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