OPINION9渡邉002

【提言002】「鞆まちづくり会社の挑戦を通じた地方創生の課題提起」 

・福山市鞆の浦及びその周辺地域を題材に、町並みや港湾遺産、風景資産を活かした収益事業を展開し、民間企業による自立的な地域活性化を図っていく組織として昨年9月に発足した合同会社鞆まちづくり会社の活動を通じて得た課題点についてコメントします。

鞆の浦との出会い、会社設立

私が初めて福山市鞆の浦にきたのは2000年の夏、大学3年のときに都市計画系研究室のゼミ活動として訪問したのがきっかけでした。当時、鞆の浦では行政による港湾の埋め立て架橋推進と地域住民による町並み保全活動が先鋭化し、鞆の浦では(良い意味で)挑戦的な地域活動が展開されていました。様々な意見が表面化し、議論が繰り広げられる現場を目の当たりにし、ゼミの師匠が「渡邉くん、これが本当のまちづくりなんだよ」とおっしゃっていたのがとても印象に残っています。

その後、不動産投資ファンドに就職し、毎日深夜までエクセルシートを眺めながら、現場の人たちとの調整のなかで大規模なファンド物件を動かすことに自分の存在価値を感じていたのですが、次第にどこかで、“本当にやりたい仕事はこれだったのだろうか?”と自問自答するようになりました。

一時期遠ざかっていた鞆の浦に、もう一度通い始めたのはちょうどその頃でした。

鞆の浦では埋め立て架橋が一段落したものの、中心部に立地する古民家の活用がなかなか進まない状況が続いていました。

進まない理由、それは資金調達を行い、古民家を収益化して利活用を進める“馬力ある団体がない”という点に収斂しているようでした。古民家と言っても不動産、そこは資産として収益性を高める必要性があります。そこは、自分の得意分野だなと思いました。

ファンドプレイヤーは、ご存知の通り投資家から資金調達し物件を取得・賃貸し、投資家が期待する収益を出し続けるのが仕事です。学生時代からずっと思い続けてきたまちづくりの世界、もう一度チャレンジするならば、“いま”、“鞆の浦”しかないのではないか、と思うようになったのです。

鞆まちづくり会社を始めてみてわかったこと

そうしてできた鞆まちづくり会社ですが、1年近く経過して、幾つかの成果と課題が見えてきました。

まず成果として、微力ですが地域の人たちにその存在を知られるようになってきました。これは、やはり新聞やニュース番組の影響が強いと思います。昨今、地方創生と若者によるチャレンジといったテーマのなかで、弊社のような取り組みに対しても取り上げてくださる機会が増えてきました。

地方の場合、地方新聞の購読率は非常に高く、新聞に小さくでも取り上げられると、次の日には住民の方々に声をかけて頂ける機会がぐっと増えます。ネット社会全盛期ですが、まだまだ地方では地方新聞の発信力はとても強いものがあります。

他方で、まだまだ力不足を痛感することも多々あります。

弊社では3月から古民家ホテルを一軒運営受託し、自社ブランド「鞆待宿」の第一号として営業開始しました。(物件名は「そわか楼」と言います。)

すでに一定程度観光客も往訪する鞆の浦、運営開始すればある程度宿泊需要はあるだろうと高をくくっていたところもあります。ですが、実際蓋を開けてみると、OTAサイトに登録しても、なかなか宿泊稼働率は取れない状況が続いています。

とてもお恥ずかしいのですが、OTAサイトでの物件の魅せ方、柔軟な価格設定、分かりやすいサービス説明、クオリティ高い写真、そして何よりweb検索でのヒット率など、やるべきことはたくさんある事がわかってきました。

特にインバウンドを取り込むには、海外の旅行エージェントとの結びつきも重要で、彼らに受け入れられるようなローカルな体験と食事、そしてストーリーのある宿泊施設が分かりやすく見えることが必要だと分かってきました。

そこで、少しずつですが「鞆待宿」では、鞆の浦という町の過ごし方・楽しみ方を網羅的に告知できるように内容を充実させてきています。同時に、FacebookやInstagramなどのSNSによって、幅広く告知していくようなことも実験的にはじめました。このあたりは、まだ試行錯誤を繰り返している段階です。

新たな取組への七転八倒

「そわか楼」の運営受託を充実させている一方で、同時並行にて新たな取組も始めています。弊社による自社賃貸、そして改修工事による案件開発です。これには、最低でも10百万以上の資金調達が必要になってきます。ファンドプレイヤーであれば超小規模案件となるのですが、超小規模案件には超小規模なりの難しさがあることも分かってきました。それはプロジェクトファイナンスによる資金調達です。

弊社では、基本的に将来キャッシュフローの与信力に応じた資金調達を図っていこうと思っています。これは、“資金調達はあくまで調達原資が活用されるプロジェクトの将来性を投資家が判断して、金融条件を決定するもの”という当方のスタンスに基づくものです。

ただ、これを小規模でやろうとすると概ねコストとスケールが合わないという課題に直面します。地域金融機関でも単独では取り組みにくいのが現状です。

そこで弊社では、さまざまな地域金融機関等との協力を得ながら、新たなファイナンススキームを構築するべく目下調整中です。同時に、投資型のクラウドファンディングの導入や小規模不動産特定共同事業法活用による投資家勧誘に向けた準備も少しずつ始めています。

超小規模、だけど直接金融による資金調達、これを実現するべく七転八倒する毎日です。

新しい取り組みを活かしたまちづくりへ

地方では投資規模が小さい分、都市部とは異なった資金調達の難しさがあります。ですが、クラウドファンディングやセキュリティトークン活用によって、これから資金調達手法は劇的に変わり、それとともに地方創生プレイヤーは新しい段階に進んでいくような予感がしています。

その過渡期のなかで、弊社は新しい取り組みの活用を積極的に進め、鞆の浦の価値を世界中に広めていけるような媒体であり続けたいと思っています。

コメントを残す