OPINION9水谷002

【提言】
<人口減少社会に対する処方箋を考える>

・2020年以降は社会構造の変化が急速に進展する可能性があり、移民政策を本格的に議論すべきである。

■人口減少シナリオは既に始まっており、悲観論一色の様相を呈している
わが国の最大のテーマが、人口減少の進行であることはいうまでもありません。この点に関しては、ほとんどの有識者が悲観的に捉えていて、マイナス影響を列挙しているのが現状であると思われます。すなわち、人口減少によって個人消費が落ち込み、国内生産活動は低迷に向かい、新規ビルや新設住宅着工件数が減り続け、オフィスも住宅も空室問題が深刻化することで、経済全体が縮小傾向をたどるというものです。

さらに、日本の場合、少子高齢化が急速なスピードで進んでおり、生産人口の減少に伴って年金負担率の増大と給付率の減少といった「不人気政策」にも取り組まなければならない状況となっています。こうした状況のなかで、生産性向上やAI・ロボット化によって一定程度の経済規模は維持できるとの見方がありますが、余り説得力のあるストーリーではありません。何れにせよ、経済力という観点では、国際的地位が相対的に低下することは間違いないと思います。

■わが国では移民の定義が正しく理解されていないのが現実である
わが国では、移民の定義が曖昧のまま放置されてきました。日本政府は移民政策を採っていないとしていますが、国連の定義では「移民とは出生地以外の国で1年間暮らした市民」となっています。この定義に従うと、日本は移民受け入れ数でドイツ、米国に次いで世界第三位となるといわれています。外国人定住者が増えると犯罪が増えるといわれていますが、警察庁調べでは外国人の犯罪率は2005年をピークに減少しています。外国人犯罪はマスメディアが大きく取り上げるので、犯罪が増えている印象になりますが、実際のところは外国人の犯罪率が高いという結果にはなっていません。

これまで、欧米諸国は多くの移民を受け入れてきました。ヨーロッパの国々は労働力不足を賄うために旧植民地から移民を受け入れてきたという歴史があります。さらに、1980年代からは安価な労働力の担い手として移民を受け入れてきました。しかし、ヨーロッパ各国の経済成長率が低下してきたことで、移民労働者に仕事を奪われることによる苦境、移民は公共サービス(住宅・教育・医療・社会保障)のメリットを不当に享受しているといった不満が増大してきました。また、これまで移民政策に対して寛容であった米国も、トランプ政権になってからは移民に対して厳しい政策を採るようになっています。
■わが国では外国人を重要な労働力の担い手と受け止めている
わが国は2010年をピークに人口減少社会に突入致しました。日本人の人口減少数は毎年増え続けており、2018年からは年間40万人超にも達しています。出生数の減少と死亡数の増加によりこうした傾向は今後とも続いていくと思われます。確かに日本は、人口減少が進んでいますが、実はヨーロッパや中国も出生率低下によって人口減少社会に入りつつある状況にあります。人口が減少していないのは、開発途上国または米国のように移民を受け入れてきた国ということになるわけです。つまり、人口減少に歯止めをかけるためには、子育てをし易い仕組みを導入して出生率を引き上げると同時に、一定の外国人定住者を受け入れることが必要不可欠な政策であるといえるのではないでしょうか。

ところで、わが国の外国人定住者は2018年6月時点で264万人に達しており、総人口の2%を占めています。ちなみに、世界の先進国では、人口の10~15%を移民として受け入れているのが実情です。この点からいえば、わが国は依然として移民受け入れの拡大余地があるといえます。昨今は、コンビニに行ってもレストランに行っても外国出身とみられる方が増えてきました。また、介護の現場でも外国出身の方のサポートが無ければスムーズに対応できない状況になってきています。彼らがいなければ日本の社会は回らなくなっており、重要な労働力の担い手となっているのは紛れもない事実だと思います。

■外国人を受け入れることによるメリットとデメリットを議論すべき時期がきている
わが国の場合、日本人の人口減少数は年間40万人台、外国人による定住者の増加数は年間20万人弱となっています。現実的には、日本に定住している人口は減少傾向が続いていますが、外国人による定住者の増加によって減少率はやや緩やかなものになっています。日本は島国で単一民族なので、異邦人を受け入れ難いという感情は理解できます。しかし、グローバル化が叫ばれている今日、純血主義にこだわり続けて良いのでしょうか。

現在のところ日本に憧れてやってくる外国人が多いのは事実ですが、今後、中国が人口減少社会に突入するなかで、労働力の奪い合いの時代になってくると思われます。「日本は外国人労働者に選ばれる対象の一か国に過ぎない」点を意識すべきです。確かに、独特の日本文化に憧れて日本にやってくる外国人は今後も増えてくるのかもしれません。基本的には、治安は良好であり、人々は親切で、露骨な差別に対して自制が働く風土があります。街は綺麗に整備されていて、四季が織りなす文化は日本ならではのものです。一方、日本には「島国根性」というのがあって、排他的文化は国全体にも企業にも地域社会にも根強く残っていることも事実だと思います。

現在、わが国は様々な課題を抱えていますが、最大の問題は年金及び社会保障制度の改革だと思います。現在の年金制度では、若年層の方は、将来の年金給付額が累積の拠出額を下回ってしまうといわれています。これでは、外国人が日本に定住して将来年金を受け取るというインセンティブがなくなってしまいます。年金制度は一例に過ぎませんが、外国人定住者の受け入れによって、時代とともに硬直してしまった制度改革に手を付けるきっかけにしてはどうでしようか。2020年代のわが国は、「座して衰退の道をたどるのか」、「新たな社会にチャレンジして成功の果実を得るのか」の岐路に立つことになるのではないでしょうか。