OPINION9渡邉003

【提言】

<「地方創生において地域金融機関が果たすべき役割について
~投融資の現場から感じること~」>

・昨今、地域金融機関のあり方について様々な論評が発信されています。衰退する地域のなかで、地域金融機関はどのようにビジネスモデルを再構築していくべきなのか、地域金融機関自身が模索し、そして苦しんでいる状況です。そんな現場をボロ

ワーサイドとして相対している筆者が気づいたことを、ご提供できればと思います。

■アパート投資ローンビジネスの崩壊

首都圏のアパートローンへの高金利フルローンに活路を見出したスルガ銀行、かつては地域金融機関の再生モデルとして、金融庁長官からも「スルガ銀行は地域金融機関のビジネスモデルの手本」と称された不動産融資を基盤とする事業モデルは、数多くの不正融資や資料の改ざんによって、自ら息の根を止めてしまいました。
その後も「TATERU」による資料改ざん、他行による過剰融資の発覚によって地域金融機関はこのビジネスから完全撤退せざるを得ない状況に追い込まれています。それでは、その後どのような事業モデルに活路を見出しているのでしょうか。

■地域金融機関の収益力低下

地域金融機関の収益力低下
下記グラフは、大手各行及び地域金融機関における預金、貸出残高を表でまとめたものです(データは帝国データバンク2019年6月27日付:国内主要 111 行の預金・貸出金等実態調査から引用)。貸出金利息から預金利息を差し引いた残りが銀行の収益力である、“利ざや”を示しています。これをみると、大手行がマイナス金利下においても貸出残高を積み上げ、貸出金利を着実に稼いでいる(貸出金利息は前年比22.6%増)にもかかわらず、地域金融機関は貸出金利息を殆ど増やしていないことがわかります。
結果として、大手行が利ざやを前年比11.2%増としたにもかかわらず、地域金融機関は軒並み利ざやを減少させている状況にあります。マクロとしてのファイナンス環境(市場から調達するか、間接金融に頼るか?)は変わりませんので、データだけ見ると同じ金融機関にもかかわらず収益力が大きく劣ってしまっているということになります。何故なのでしょうか?

■リスクを取りたがらない地域金融機関、海外でリスクを取ってきた大手行

下記の表は日本経済新聞2018年2月22日付「プロジェクト融資、世界で24兆円 アジア勢攻勢続く」に添付されたプロジェクトファイナンス組成実績のランキングです。

プロジェクト融資全体の約2割を占める最大市場は米国ですので、とくに海外のプロジェクトファイナンス案件において邦銀の存在感が際立っていることがわかります。(表には有りませんが、みずほ銀行も第8位にランクインしています。)リーマンショックによる痛手が相対的に低かった邦銀各行が、2012年以降海外の主要プロジェクトにおけるファイナンスを主導してきた結果、世界的なリスク資金の供給者を担うようになってきたのです。

 

海外でプロジェクトファイナンスの実績を積み上げていく大手行に比べ、なかなか収益モデルをつくれない地域金融機関、それでは一体どんなビジネスモデルへの変換が必要となるのでしょうか。
それは、やはりプロジェクト単位でリスク・リターンを定量化し、そのリスクに応じて必要な金利を設定するとともに、各プロジェクトの深いところまで入り込んで(ハンズオンという事が多いですが)で対象ビジネスをモニタリングしながら収益力を拡大していく、事業力を担保とするファイナンス・スキームなのだと思います。
実際に、地域金融機関のなかには本体とは別にベンチャーキャピタルを設立し、金融機関では取り組みづらいエクイティ性の資金調達をサポートする取り組みを始めているところもあります。

■地域金融機関発VCの魅力と課題

例えば、西日本シティ銀行は日本政策投資銀行や地域経済活性化支援機構、地元投資会社であるドーガンと共同でVCを組成(NCBキャピタル)し、地域企業に対する投融資を実行しています。エクイティファイナンスから入りながら、必要に応じてデットの調達もサポートする形で、地域企業の成長に寄与し始めています。
このような動きは特に九州各県での取り組みが活発化しており、九州の域内VCによる共同投融資も見られるようになってきました。まさに金融の地産地消が実現し始めているところです。
他方で、このような動きにおいて一つ課題を述べておきたいと思います。
それは、これら地銀発VCが本当にエクイティホルダーとしてレンダーサイドと相対することができるか、という点です。地域金融機関によるフルサポートというのは聞こえが良いですが、本来ならば資本構成上、エクイティホルダーとレンダーは利益が相反する関係にあります。エクイティホルダーはより高い配当を得るために、レンダー条件を緩和しようとしますし、レンダー側は少しでも企業経営への関与を高めようとするきらいがあります。真に独立したVCと言えるためには、人材交流含めてウォールが完全に引かれていることが必要でしょう。

■まとめ

ざっとですが、地域金融機関の果たすべき役割について思うところ述べさせて頂きました。地方において、地域金融機関は血液を循環させる心臓のような役割を果たしています。私も仕事柄、多くの銀行員さんにお会いしますが、みなさま地域にたいして熱い思いと情熱を持っています。これを形にするファイナンス・スキーム、そして事業者とともにリスクを取って地域活性化に取り組む組織、これが成長してくれば地域として、これ以上心強いことはないと思います。
地域金融機関が小手先のアパート投資のような小手先のビジネスモデルから脱却し、本来あるべき地域投資会社に成長していくことを願い、本項を閉じたいと思います。