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【論評】

<タイ不動産のREIT市場の歴史と現状について> 

タイのREITの歴史

1997年のアジア金融危機を受けて、タイ証券取引所(SET)は、新しい証券化ビークルであるPFPO、つまり公募プロパティファンドを導入し、不動産に新たなキャピタルフローを呼び込もうとした。

2003年開始、2013年に終了したPFPOスキームは、500万㎡超におよぶ資産への投資を支え、2017年10月31日現在、PFPOの時価総額は、2,490億タイバーツ(76億USドル)となっている。

2014年、タイ証券取引所は、時代遅れとなり流動性に欠けるPFPOビークルに代わって、シンガポールREITモデルに基づいた新しいREITスキームを発表。導入以降、REITの時価総額は合計850億タイバーツ(26億USドル)に達し、その資産は200万㎡に及んでいる。

 

*無利子預託義務とは外貨をタイバーツにする際には外貨の一定割合を無利子で預託すること(Unremunerated Reserve Requirement, URR)

資産規模でみると、産業REITが、現在市場の約半分を占め、それに続いて専門資産(例:MICE*施設)とオフィス物件となっている。

 

(出所:JLL、The Thai Real Estate Association)

*MICEとは、企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字のことであり、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称。 MICEは、企業・産業活動や研究・学会活動等と関連している場合が多いため、一般的な観光とは性格を異にする部分が多い。このため、観光振興という文脈でのみ捉えるのではなく、MICEについて、「人が集まる」という直接的な効果はもちろん、人の集積や交流から派生する付加価値や大局的な意義についての認識を高める必要がある。

(出所:国土交通省)

■REIT市場の概要

タイ証券取引所(SET)には、2018年4月時点、PFPOが39、REITが21、IFFが6上場しています。このセクターの時価総額は着実に成長し、現在では7,106億バーツ、SETの時価総額の3.9%を占めている。上場PFPOの数とその時価総額は、2017年に大きく減少した。これは、(i)時価総額規模の大きいTCCグループ傘下のプロパティファンドが3銘柄(TCIF、THIFおよびTRIF)が上場廃止になったこと、(ii)プロパティファンドが7銘柄、REITに変換されたことによる。これらの7銘柄とは、CPNRF、FTCPF、SSTSS、WHAPF、TFUND、TLOGISおよびTGROUTH。この背景には、2017年末に終了するPFPOからREITへの変換にかかる免税措置期間の終了*がある。REITへの変換が行われ、すべての資産が移管されると、これらのプロパティファンドは上場を廃止し、REITとしてSETに上場される。また、2017年後半には、WHAPFの資産はWHARTに統合され、TFUND、TLOGIS、TGROWTHの資産はTREITに統合された。

*PFPOからREITへの変換にかかる免税措置

タイ内閣は、プロパティファンドからREITへの変換を進めるために、諸税(VAT、特定事業税、印紙税、REITに変換されるプロパティファンドのユニット投資家にかかる所得税)および取引にかかる費用(移管費用、モーゲージ登録、リースホールド登録)の免除を、当初の2016年末から2017年末に1年間延長するという財務省の提案を承認。これにより、取引にかかる大きな費用の負担がなくなるため、PFPOからREITへの変換が後押しされることになった。タイのPFPOは新しい資産取得のために増資することを認められず実質廃止へ向かう。REITへの変換は、プロパティファンド、特にリースホールドの資産を抱えるプロパティファンドにとっては、ファンドの資金を成長させ、分配金の利回りを底上げするのに役立つ。REITには高いギアリングが認められているからです。REITは全資産の35%を上限として(または、投資適格の格付けがされれば60%を上限として)ギアリングが認められているのに対し、プロパティファンドは時価純資産の10%となっています。海外投資ができるので、REITのほうがより柔軟性がある。総資産の10%を上限として、未開発のプロジェクトに投資することも可能。

 

(出所:DBS)

タイREITの要件

REITは、総発行済み投資口数の15%を最小浮動株とする要件があります。PFPOと比べて、高いギアリング比率*と投資できるアセットクラスの幅広さがあります。理論的には、これらが健全な流動性と成長を支えることになっている。

REITは、ガイドラインもまた、評価/資産価格設定およびガバナンスの点においてより厳しくなっている。PFPO取得価格が査定価額より10%ほどまで高くなることがある一方で、REITは査定価額の5%以下に限られる。

ガバナンスという意味では、REITは(株主の)年次総会を開くことが求められている一方で、PFPOはそれがありません。とはいえ、公開される情報の量または詳細という点においては大した差はないといわれています。

REITの平均的なギアリングは20パーセントと言われており、一方PFPOは、限度として設定されている10%を大幅に下回り、5%にも満たない状況である。

(出所:タイ証券取引所(SET))

*ギアリング比率とは、レバレッジ比率と同義。自己資本に他人資本(借入)を加えて運用することで、自己資本のリターンを高める効果をレバレッジ効果と呼ぶが、その比率のこと。計算式:レバレッジ比率(%)=総負債(他人資本) ÷ 自己資本 × 100

 タイREITインデックス

主要インデックス

2018629日末時点、日本との比較

国名 QTD YTD 1年 3年 5年 10年
タイ -3.6% 4.9% 22.8% 17.6% 10.0%
日本 1.3% 10.1% 10.2% 6.7% 6.2% 6.6%

(出所:S&P Dow Jones Indices、Global Real Estate Report: Second Quarter 2018、2018年6月末時点)

タイREIT区分別

(出所:DBSのレポートをもとに作成)