OPINION9水谷008

<世界経済動向について>

 ・コロナ禍は100年に一度の大変革期である。中国が世界一の経済大国になる夢も現実化しようとしている

パンデミックは収束の方向に向かっていくのではないか

2021年2月19日現在のコロナ感染者数は、全世界で1億1,000万人を超え、死亡者数は245万人に達しました。我が国では、感染者数は42万人、死亡者数は7,100人超となり、東アジア、東南アジア地域では最大の感染者数、死亡者数となってしまいました。過去半年間の動きをみると、新型コロナの発生源とされている中国の感染者数がさほど増えておらず、国別感染者のランキングが大きく下がっていることが目につきます。中国の場合、PCR検査件数の拡充による陽性者のあぶり出し、都市封鎖など強制的行動制限によるウイルスの封じ込めといった対応をスピーディかつ大掛かりに行っており、このことが感染抑制に繋がっているようです。WHOの発表数値がどこまで実態を反映しているのかについては、さまざまな見方がありますが、各国ともに新規感染者数はピークを付けて減少局面に入っていることは間違いなさそうです。今年7月に予定されている東京オリンピック・パラリンピック開催については、依然として予断を許しませんが、開催国としてはギリギリの判断を迫られることになりそうです(図表1参照)。

パンデミック(世界的な感染症の大流行)を引き起こした新型コロナウイルスですが、ウイルスとは戦争して、撲滅するのではなく、共存・共生することが大切です。これまで、人類は何らかのウイルスと共存して生きてきたわけです。地球の歴史は46億年、ウイルスの歴史は30億年といわれていますが、人間の歴史はたかだか20万年です。人類が滅びてもウイルスは生き続ける可能性があるわけです。今回の新型コロナウイルスが何時、どういった形で収束するのか分かりませんが、コロナによって、我が国のなかでのさまざまな課題が見えてきました。すなわち、人口当たり病床数世界一と言われていた医療供給体制の制約、危機管理時における政策対応の脆弱さ、デジタル化の遅れといった問題です。逆に、コロナ禍でも上場会社が経営破綻をせずに頑張っている点は他国には見られない動きだと思います。

こうしたなかで、日本では本当のことが伝わらなくなってきています。一般紙(除くスポーツ紙)の発行部数は過去20年間で1,300万部減っています。理由は、貧困化によって新聞購読が出来なくなったこと、そしてSNSの進展により情報取得の媒体が変わってきたことです。確かに、SNSは便利ですが、ネット情報は検索エンジンから入って取得します。その結果、自分に関心のあることのみの情報を取得することになり、情報内容が狭まってくることになります。関心のない情報に接することが少なくなってくるわけです。メディアの情報発信にも改善の余地があります。メディアの役割としては、適正な取材をして、「事実」と「世論」と「メディアとしての意見」を正しく伝えることが大切だと思います。推察が内在している情報をあたかも事実として伝えたり、一部の意見が全体の意見であったりといった発信の仕方はミスリードの温床となってしまいます。

世界経済見通しによれば、コロナ禍で中国ひとり勝ちの様相が強まっている

2021年1月のIMF予測によると、2020年の日本のGDP成長率は前年比△5.1%とされています。その程度のマイナスで済むのかといった印象があるかもしれませんが、そもそもリーマンショック後10年間の日本のGDP成長率は年率0.7%に過ぎませんでした。今年の成長率がマイナス5.1%ということは、日本経済の水準は2013年に戻るということになるわけです。こうしたなかで、中国は2020年も唯一プラス成長で駆け抜けた模様です。中国は、2021年以降も年率5.0%成長を続ける見込みです。中国は、共産党政府安定化のためにも無理をしてでも経済成長を続けなければなりません。経済失速は政権運営にとって致命傷になりかねません。ちなみに、中国を除くほとんどの国及び地域は2020年のGDP成長率はマイナスとなっています。なかでも欧州各国は、ロックダウン(都市封鎖)の影響が大きく、経済活動の停止によって大きな落ち込みとなったようです(図表2参照)。

さて、2021年はどうなるでしょうか。IMF予測によれば、2021年のGDP成長率はほとんどの国及び地域でプラスになるとしています。この調査が発表されたのは2021年1月であり、前回発表された2020年10月時点の予想に比べると各国とも概ね上方修正されています。国民や事業者に対する持続化給付金等の公的サポートが経済を下支えしたことが影響しているものと思われます。パンデミック下で世界経済は意外と健闘したといった印象ですが、その裏側には各国政府及び中央銀行による巨額の財政支出とマネタリー供給があります。そろそろ、政府・国会議員は、異常な財政支出及び金融政策の出口を意識した政策を議論すべき時期に来ているのではないでしょうか。

2021年の経済成長率がプラスになるとはいえ、水準自体は依然として不安定なものとなっています。コロナ前の2019年のGDP水準を100とすると、2021年予想では、全世界101.8、先進国99.2、米国101.5、ユーロ圏96.7、日本97.8、イギリス94.1、新興国・途上国103.7、中国110.6、アセアン原加盟国5カ国101.3などとなっており、中国の経済的プレゼンスが益々高まると予想されています(2021年1月のIMF世界経済見通しより試算)。経済的には、コロナ禍で中国ひとり勝ちの様相が強まると予想されているわけです。ちなみに、日本がコロナ前の経済水準に回復するのは早くても2022年とみられており、コロナによる経済的ダメージが大きかったイギリス、フランス、イタリア、スペインといった欧州各国では、コロナ前の経済水準に回復するのは2023年以降と予想されています。

世界を俯瞰的(ふかんてき)にみると、日本経済の埋没が続いている

日本が今おかれている状況を見てみましょう。1988年の世界GDPに占める日本の比率は16%、日本を除くアジアは6%でした。それが、2018年には日本の比率は6%にまで低下し、日本を除くアジアは23%にまで高まりました。日本はここ30年間近くで驚くべきスピードで埋没しているわけです。さらに、2025年には世界のGDPに占める日本の比率は4%にまで低下するといった見通しもあります。IMFのデータによれば、19世紀初頭である1820年の主要国GDPの世界シェアは中国が33%を占めて世界トップを誇っていました。次いで産業革命を経た西欧ということになります。米国のシェアは2%であり、我が国の3%(当時は江戸時代後期)を下回っていました。尤も、この推計事態どのようにして求められたのかわかりませんが、IMFが一定条件の下で推計したのだとすると、ある程度の客観性は担保されていると思われます。その後20世紀に入り、世界経済の中心は欧州から米国へと移り、21世紀になると米国のひとり勝ちから中国の台頭による米中二極化の時代へと進んでいくわけです。GDPは付加価値の総和ですので、やはり世界的なシェアが低下していくというのは、政治的にも経済的にもプレゼンスが低下していくことは否めないと思われます。我が国の場合、コロナを通じて経済的プレゼンスが一段と埋没してきており、現実を視座しなければならない局面にあると言えるわけです(図表3参照)。

現在の世界の風潮は、米国と中国の経済力が何時逆転するかということであり、そうなれば自由主義経済は衰退し、民主主義とは別の価値観を持った政治体制が世界を席巻するのではないかといった危機感が台頭していることです。図表3にみられるように今から200年前の中国は世界のGDPの3分の1を占める経済大国でした。次いで西欧ということになり、米国は建国50年ほどで江戸時代の日本よりも小さな経済に過ぎませんでした。それが、20世紀は米国の時代となり、米国のGDPは世界の3分の1を占めるに至りました。そして、21世紀は中国の時代となるわけです。さらに歴史を遡れば、16~18世紀の世界的な経済超大国は中国とインドでした。歴史は繰り返されるかどうかわかりませんが、21~22世紀は中国とインドが世界の超大国となり、覇権を争う時代となるのかもしれません。その場合、我が国はどういった立ち位置で振舞えばいいのか、今から考えておく必要があります。ちなみに、19世紀に中国が没落した最大の原因はイギリスから持ち込まれた「アヘン」であると言われています。よもや同じ轍は踏まないと思われますが、どこの国でも何かのきっかけで経済力が大きく変わってしまうことを意識しなければならないかもしれません。

コロナ後にはどんな世界が待ち受けているのであろうか

ところで、資本主義には産業資本主義、金融資本主義、デジタル資本主義という3つの資本主義が存在するという見方があります。これまで、日本は産業資本主義の優等生として走ってきました。これがモノづくり日本の真骨頂です。ところが、金融資本主義、デジタル資本主義の時代になると日本は分が悪くなってきました。これからは、この3つの資本主義のどこに主軸を置くかということが大切となってきます。世界的に共通している認識は、21世紀の覇権を握るのはデジタルであるというものです。デジタル技術で覇権を争っているのは中国と米国です。特に、中国では、強い中央政府の号令の下、あらゆる分野にデジタル技術が入り込んでいます。果たして、こうした社会が人々にとって幸福なことなのかどうなのかわかりませんが、彼らが便利さを手に入れたことは間違いないと思われます。

翻って我が国はどうでしょうか。今回のコロナ禍で、さまざまな分野でデジタル化の遅れが露呈されてしまいました。デジタル化のメリットは「スピード」、「扱いやすさ」、「正確さ」の3点だと思います。いくら正確であっても、扱いにくかったり、スピード感に乏しかったりするようであれば利用するメリットは薄らいでしまいます。我が国の場合、身近に優れたたシステムが存在します。スマホで操作できる「新幹線予約システム」と「中央競馬のネット投票システム」です。新幹線予約システムでは、直前の乗車変更が出来て、座席指定もできます。2020年の中央競馬界は、ほとんどのレースを無観客開催とし、馬券販売もネット販売に限定していましたが、前年よりも売上高が伸びました。これらは優れたデジタルシステムの一例ですが、怒らくこうした一般庶民の生活に密着したシステムは他国ではそうそうないのではないかと思います。こうしたシステムを一般国民が日常利用する医療、教育、行政、不動産、飲食などの分野に応用すれば、デジタルの使い勝手が良い国となるのではないでしょうか。問題は誰がイニシアティブを取るかに尽きると思われます。

一般社団法人 不動産総合戦略協会 客員研究員 水谷敏也